企業向けIT情報を発信するメディア「ZDNET Japan」。その編集長に2025年4月1日付で就任した藤本和彦氏に、インタビューを実施した。前編では藤本氏のキャリアや媒体の特徴、編集方針について伺った。

フリーランス翻訳者から始まった業界キャリア
加藤:本日はよろしくお願いします。まずは経歴について教えていただけますか?
藤本:私のキャリアはフリーランスの翻訳者からスタートしています。大学時代に言語学を専攻していたこともあり、英語を使った仕事に就きたいと考えていましたが、翻訳者や通訳者といった職業に、未経験者が入れるような募集がなかなかありませんでした。それなら組織に入るのではなく、フリーランスで実力勝負してみようと思い、大学を卒業してからフリーランス活動を始めました。
ただ、英語以外の分野も自分の強みとして磨いておきたく、学生時代から趣味でコンピュータに触れていたことから、「コンピュータと英語翻訳を掛け合わせて業界に入っていこう」と考えました。そこで現在の朝日インタラクティブの前身であるシーネットネットワークスジャパンがウェブ媒体の翻訳者を募集していることを知り、チャレンジして合格した、というのがメディア業界に入った経緯です。
加藤:新卒でフリーランスという選択をされたのですね。
藤本:そうですね。私の時代はまだ就職氷河期ほど厳しくはありませんでしたが、それでも募集がそれほど盛んではない時期で、就職浪人する方も多い状況でした。
フリーランスで数年続けた後、社内で活動して欲しいというお声がけをいただき、シーネットネットワークスジャパンに入社しました。そこで5、6年働いた後、翻訳だけでなく自分で取材して記事を書きたいという思いが強くなり、別の外資系の出版社に編集者として転職したんです。
加藤:さらにメディアでのキャリアを積まれたのですね。
藤本:そこではIT系の媒体を担当し、実際に取材して記事を書く記者の仕事を経験しました。しかしながら、その会社が日本事業を撤退することになったため、転職を余儀なくされました。転職先では、エンタープライズ領域のIT媒体を担当し、2015年に朝日インタラクティブに戻ってきました。
何社か転々としていることもあり、業界のいろんな方と面識があるのが自分の強みだと思っています。
ZDNET Japanの強みは、海外翻訳記事と国内取材記事の2本柱
加藤:ZDNET Japanについて、どのようなメディアなのかご紹介いただけますか?

藤本:一言でいえば、企業のIT課題を解決するための情報を提供するメディアです。企業ITの中でも特に情報システム部門やIT部門と呼ばれる人たちが抱えている課題を解決できる、日常の業務で役立つような情報を提供することがメインになっています。
一方で、デジタル変革やAIといった文脈で、裾野が非常に広がってきています。必ずしもIT部門の人たちだけがITを使うわけではないので、この数年はカバー範囲を広げて、ITを活用する側にもフォーカスした記事作りをしています。
加藤:記事は、海外翻訳と国内取材の二本柱でしたよね。
藤本:はい。ZDNET Japanの強みの一つは、グローバルブランド力にあり、そのコンテンツが使えることです。世界中で発信されるコンテンツを翻訳して日本の読者の方々にお届けすることで、米国をはじめとする海外の最新トレンドをいち早くお伝えできます。
ただ、それだけでは日本の状況に対応できません。読者の方々にとって自分事として捉えられる情報が大切なので、国内取材も重視しています。製品やサービスベンダーおよびユーザー企業さん、提供側と利用側双方のお話を日本で独自に取材し、記事にするのがもう一つの柱です。
加藤:読者層はどのような方々でしょうか?
藤本:やはりIT部門の方々が一番大きな割合を占めています。業界で言うと、情報サービス産業の方々に多く見られていますね。SIerの方にも読んでいただいています。
新編集長としてよりチームの生産性を高めたい
加藤:ZDNET Japanの現在の編集部体制はどのようになっているのでしょうか?
藤本:私を含めて3人が専任で担当しています。
加藤:新編集長就任に伴い、編集方針は変わりますか?
藤本:方針がガラッと変わるわけではありません。これまで通り、企業のIT部門や情報システム部門の課題解決になるような情報を提供するというのが基本方針です。
編集部運営については、人数が少ないこともあり、よりチームの生産性・効率性を上げるような運営を心がけていきたいと思っています。
読まれる記事はWindows 10サポート終了、セキュリティ、Linux
加藤:最近特に読まれた記事や注目された企画はありますか?
藤本:直近でよく読まれる記事は大きく3つのカテゴリーがあります。
1つはWindows 10のサポート終了ですね。2025年10月にサポートが終了するので、既存のPCをどうするのか、移行をどうするのかといった話に、読者の関心が集まっています。PCベンダーやそれを導入するベンダーにとっては、この秋の一大商機とも言えるでしょう。

(https://japan.zdnet.com/article/35232909/ より引用)
2つ目はセキュリティです。今日の企業ITにとって非常に重要な課題の一つで、常に注目を集めています。毎日のようにさまざまな脅威が発生していて、我々も含めていつどの企業や組織がターゲットになるかわからないという状況にあります。
そしてもう1つがLinuxに関するトピックです。ZDNET JapanではLinuxの話題を頻繁に取り上げているのですが、あまり他のメディアが取り上げていないこともあってか、読者の皆様から好評をいただいています。米国のZDNETにはLinuxに強いエディターがいて、その質の高いコンテンツも後押しとなっています。
聞き手:加藤恭子(広報ナビ 編集長) 執筆・構成:村島夏美(primeNumber)