8月29日に、ビーコミ加藤が主催する「第17回 マーケ広報meetup 2024」を開催しました。台風が近付くあいにくの天候ながら50人以上の広報やマーケティング担当者、メディアの方々が来場いただきました。ご参加ただいた方々ありがとうございます。
広報やマーケティング担当がつながる場
会場はソフトクリエイトさんにスポンサーとなっていただき、場所や懇親会の軽食だけでなく、自社で制作したという二日酔い対策の薬「2日酔いBlocker」もご提供いただきました。
イベント冒頭では、主催の加藤がイベントの趣旨について説明。マーケ広報meetupは、広報やマーケティング担当のつながりをつくる場として、2010年頃から年1、2回のペースで開催しています。特徴的なのはその参加者で、性別も年齢もばらばら、初参加の人も多数います。その趣旨として加藤は「いつものメンバーで会っているだけではマンネリで進化が止まってしまう」と説明、「異質な人とつながる場になって欲しいので積極的に交流してください」と呼びかけました。
広報本の著者による広報ノウハウが惜しげも無く披露されたミニプレゼン
イベントの前半は「著者によるミニプレゼン」と題し、広報に関する書籍を出版した7名による5分程度のプレゼンを実施。ひとり広報やマスコミ対策などさまざまな視点で広報に関するプレゼンが行われました。
トップバッターを務めたEAT UNIQUEの小野茜さんは、飲食業や外食業界向けニュースメディアを経て、ABCCooking Studioから広報をスタート。未経験ながら社内に広報体制を確立し、さまざまなメディア露出やイベント運営を手がけたのち、その経験を活かして自らPR支援のEAT UNIQUEを設立。これまでベンチャーから大手企業まで80社以上のPRを支援してきました。
1人で広報を立ち上げた経験を活かし、2022年には「ひとり広報の戦略書」を発売。また、共同PRとともにオンラインスクールの「ひとり広報アカデミー」を立ち上げ、自ら講師を務めるなど、ひとり広報を支援する活動も継続的に行っている小野さん。自書について「あと一歩で1万部になるので、ぜひ買ってください」とアピールしました。
ハッシン会議の井上千絵さんも「ひとり広報の教科書」というひとり広報に向けた書籍を執筆。会社名の「発信(ハッシン)」は、「記者の時代からさまざまな人にお話を聞く過程で、当事者の発信が社会を動かす原動力になると感じた」との由来を説明し、「事業に関わる人が自分の言葉で伝えることを育てていきたい」とのビジョンを語りました。
また、100人以上3000人未満の企業170社のうち、約70%が広報専任担当を置いていないというデータを示し、広報を兼務している、広報担当を置いていないという会社をなんとかしたいという思いで書籍を執筆したと語る井上さん。初めて広報活動をする人向けのテンプレートを書籍に盛り込むなど、ひとり広報をサポートする書籍として「辞書のように机に置いて何度も読んで欲しい」との思いを語りました。
「広報ekky流「伝わる」の本質」を執筆した、サンコー広報の﨏(えき)晋介さんは、元々は営業だった自ら広報の部署を立ち上げ、テレビやラジオ、雑誌、新聞などのマスメディアに多数取り上げられるなどの実績を確立。こうした露出により、会社の売上も10億から37億へ急成長したと語ります。
メディア露出の秘訣として﨏さんは、番組でどう取り上げられるのかをイメージした企画書を作成するなど、「番組制作者の視点で考える」ことの重要性を指摘。自らも「一般人が普通にスーツを着て商品を紹介しても面白くないので、自らオーバーオールとオレンジ色というキャラクターを作り上げた」という徹底した広報スタイルを語りました。
「マスコミ対策の舞台裏」を執筆した遠藤眞代さんは、ソニーで広報を14年間勤めた後に独立して「Doen」を立ち上げ。ソニー時代は大企業ということもあってメディアにも比較的紹介されやすかったものの、中小企業やスタートアップでは広報の苦労の質が違い、そもそも広報の地位が社内でも低いとの課題を示しました。
現場で苦労する広報のために、広報を主語にした経験談を伝えたいという想いから、現在はアドビの広報本部長を務める鈴木正義さんとともに、日経BPでの連載「風雲! 広報の日常と非日常」をスタート。すでに180回を超える人気連載となり、連載の内容を収録した「マスコミ対策の舞台裏」も出版。「経営者が広報について理解していない、広報に悩んでいる人に読んで欲しい」と語りました。
栗田朋一さんは、日光江戸村、電通PR、ぐるなびという経歴から10年前に独立してPRアカデミーを設立。2014年に発売した「新しい広報の教科書」は2021年に改訂版を発売。SNSの活用術をまとめた第6章に加えて、凄腕広報の事例を収録した第7章などを新たに書き下ろしました。
栗田さんは「広報のノウハウや成功事例を共有しているのでとことん学んで欲しい」と語りつつ、「成功事例は書いた私の正解でしかなく、みなさんの正解ではない」とも説明。「万人に共通する正解はないので、失敗の中から正解を見つけて欲しい。そのためにこの本の事例集でも失敗事例を入れてもらっている」と、失敗することの重要性を語り、「(このイベントのような)他社広報とのつながりも武器にして、一緒に壁を乗り越えていきましょう」と呼びかけました。
株式会社ベンチャー広報の野澤直人さんは、自身が書いた「逆襲の広報PR」について、「初めて広報の仕事をするときにたくさん本を読んだが、大企業の話が多くてギャップを感じた」と執筆の経緯を紹介。「PRとはなんぞやといった内容はなく、読んですぐ実践で使えるような本になっているが、広報始めたばかりの人にとっては偏った内容なので、他の本を何冊か読んだ上で、こんなやり方もあるよという参考にして欲しい」と語りました。
2017年の発行以来、続編を希望する声も多いとのことですが、野澤さんは「本を書くのは大変だから」と冗談めかしつつ、「時代も変わったので今は本を書く代わりにYouTubeチャンネルで情報を発信している。書籍は1回書くと中身を変えられないが、YouTubeは自分がインプットした最新の情報をすぐにアウトプットできるのがいい」と、YouTubeでの情報発信の魅力をアピールしました。
著者によるミニプレゼンの最後は、主催の加藤が自著の「話題にしてもらう技術」を紹介。「企業が伝えたいことと、メディアや読者が知りたいことの重なりはとても小さいので、ここをうまくつなげていくことを考えないとなかなかでメディアに取り上げられない」との考えを示し、「まずは最優先の記者5名のリストを作り、関係性を濃くしていくのがいい」とのアドバイスを披露しました。
ミニプレゼンの締めくくりに「広報の超人の話を聞いて、自分と違いすぎて何もできない、もしくは見ているだけで満足してしまう人もいる」と指摘。「いきなり超人を真似てすごいことをやろうとすると手も脚も出なくなる、小さくていいからスタートして、失敗や挑戦を重ねていくのがいい」と語りました。
ヘラルボニーや技術広報、生成AIに関するスペシャルセッション
イベントの後半はスペシャルセッションとして、ヘラルボニーの広報事例や技術広報、生成AIについてゲストが語りました。
ヘラルボニーは、知的障害のあるアーティストたちの作品をプロダクト化するブランドなど、福祉領域の拡張を見据えた事業を展開する会社。広報担当の小野静香さんは、ヘラルボニー設立の経緯について、創業者である松田兄弟の兄であり、自閉症のある翔太さんが「可哀想」と言われることに疑問を抱き、障害に対するイメージを変えたいとの思いで設立したと説明。障害のあるアーティストの作品を使ったスカーフやネクタイなどを販売し、その売上の一部をアーティストにライセンスとして支払うというビジネスモデルで運営しています。
ヘラルボニーのPRチームのミッションは「障害のイメージを変容して新しい価値観となる文化を築くこと。メディアの露出は1年に1,000回と多い一方、「障害者アートというとチャリティや支援というイメージになりやすいが、そういう空気感を帯びた発信にならないよう日々考えている」との考えを語りました。
そうした広報活動の一環として紹介したのが、ヘラルボニーが「異彩の日」と定めて毎年活動する1月31日に実施した広告。これはアーティストの家族の方から「ヘラルボニーのおかげで息子が扶養の基準を超えて確定申告することとなった」という連絡をいただいたことから、「鳥肌が立つ、確定申告がある」というコピーの広告を作成。国税局のある霞ヶ関に掲示したポスターが話題となり、日本最大級のクリエイティブアワード「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」でPR部門の初代グランプリを獲得しました。
また、障害に関する理解を広げるために、メディアの取材に関してはヘラルボニーのワーディングスタンスをあらかじめ伝えるという取り組みも紹介。「最初は嫌われてしまうかと思ったけれど、お話してみるとその背景を理解してもらったり、障害者という言葉を考えるいい機会になったと言ってもらえる」と語りました。
Helpfeelで技術広報を務める風穴江さんは、技術広報をテーマにプレゼン。「技術広報とはITエンジニアに対するブランディング活動」と説明し、「いまはいろんな業界でITの力が占める割合が大きくなっていて、ITエンジニアをどれだけ抱えているかがビジネスに影響する時代」と語り、「ライザップやファーストリテイリングなど、ITに直接は関係なさそうな企業も技術系イベントにスポンサードしている」との現状を紹介しました。
広報と技術広報の違いは「広報は広報担当が活動するが、技術広報はITエンジニアが自ら発信するのが違い。ターゲットやメディアもITエンジニアで、扱う内容もITエンジニアに受け入れられれば幅広いという点が強烈に違う」と語りました。
また、「これは僕の妄想ですが」と断った上で、「未来の広報は技術広報のように、社員自らが発信していくのでは」との考えを披露。「会社が発信をコントロールするのではなく、エンジニアのモチベーションを盛り上げて自発的に発信していくという、ちょっと普通とは違う技術広報を理解いただいて注目していただければ」と締めくくりました。
フリーランスITジャーナリストの谷川耕一さんは、生成AI時代のメディアの課題についてプレゼン。「最近はGoogleで検索すると生成AIの要約が表示されて、必要な情報はそこで得てしまうので、検索結果をクリックしてメディアに来てもらえなくなり、メディアの記事を読者の人が直接読んでくれるという機会が減っている」と危機感を示しました。
また、メディアのビジネスモデルも「クライアントに良質なリードを提供するのが主要なビジネスモデルだが、同じメディアに2、3回出稿したら同じリードしか取れないし、そもそもデジタルマーケティングをしっかりやっている企業であれば、自社のリストとメディアのリードのリストはほぼ同じで広告の効果がない、ということも実際ある」と業界の裏側を説明。「コンテンツそのものに対価を得る価値があるはずなのに、リードを取るためにコンテンツが使い捨てになっている」と語りました。
こうした危機感に向けて谷川さんが、週刊BCNの元編集長である本多和幸さんとともに9月9日から立ち上げる新媒体が、ビジネスITの活用事例に特化したニュースメディア「CaseHUB.News」。本多さんが経営する合同会社霹靂社が運営母体となり、はデジタル人材や潜在的デジタル人材をターゲットとして、ビジネスITの事例を集めるとともに、それを商業メディアクオリティで記事化していきます(関連記事)。
谷川さんは「とにかく事例をたくさん集めて、その集まった事例から新しい価値が生み出せるのではないか」との展望を示し、「広告のリードモデルだけでなくコンテンツの二次利用やコミュニティにもチャレンジしたい」とコメント。「メディアというビジネスモデルが古いと言われるが、では古くないメディアはどんな形なのか。広報のみなさんとともに新しいメディアの形を模索していきたい」と呼びかけました。
会場にはメディアスポンサーとなったメディアの方も登壇、それぞれのメディアの概要や取り組みについてお話しいただきました。
日経クロストレンドの森岡さんは「記者の感性を活かして自らがアンテナを張っていく属人的なチーム編成なので、情報集めに苦労しているところもあり、どんどん情報を投げ込んで欲しい」とコメント。
ITmediaマーケティングの織茂さんは加藤の連載「B2Bマーケターのための『広報』入門」を紹介し、「なぜ取材してくれないのか、なぜ思ったような記事にならないのかという広報の疑問をプロの目線で解説している。本を読めば詳しく書いてあるが、ライトに読みたい人はITmedia マーケティングを読んでください」とアピールしました。
MarkeZineの松崎さんは、「Webの記事だけでなく2,000人規模のカンファレンスを年2回開催したり、毎月特区週テーマを設けた雑誌を発行したり、編集部が日替わりで毎日Voicyも配信している」と活動を紹介。9月には「MarkeZine Day 2024 Autumn」を開催、「全部無料で聴けるのでぜひ参加してください」と呼びかけました。
Web担当者Forumは当日の参加は都合がつきませんでしたが、別途四谷編集長のインタビューが広報デリに掲載されていますのでこちらをご覧ください。
充実したプレゼンテーションの後は、軽食を交えた懇親会が開かれ、参加者同士でさかんなコミュニケーションが行われました。また、イベントの模様は参加者が投稿したXのまとめもありますので、こちらもぜひご覧ください。
マーケ広報meetup 2024 まとめ – Togetter [トゥギャッター]
https://togetter.com/li/2426302
(執筆:編集部、Y.K)
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