想いを伝える言葉を持つ ヘラルボニーPR

想いを伝える言葉を持つ ヘラルボニーPR

2024年8月29日、今年もマーケ広報meetupが開催されました。(レポートはこちら)。本記事では、その中でのヘラルボニーのセッションに焦点を当ててご紹介します。

ヘラルボニーは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、障害のイメージ変容と新しい文化の創出を目指す企業。主に知的障害のあるアーティストとライセンス契約をしていて、展覧会の企画や、商品開発、企業とのコラボレーションなどを行っています。今回は、同社の広報室で、シニアマネージャーを務める小野静香さんが、「ヘラルボニーPRが実践する、メディアを通じて深く『想い』を届ける工夫」と題したセッションを行いました。

ヘラルボニー 広報室 シニアマネージャー 小野静香さん

PRチームのミッションと企業ミッションは、ほぼイコール

冒頭で「障害のイメージを変容して、新しい価値観となるような文化を築いていくことが自分たちの使命だ」語った小野さん。「これは、短いスパンでの変容ではなく、パブリシティによる認知拡大を通じて、障害に対するイメージを変え、さらには皆さんの行動が変わり、10年後、30年後の未来は、もっと障害に対してフラットなものになっていけば良いという思いです」と長期的なビジョンを示しました。

具体的な目標について小野さんは、「『障害=欠落』であるとか、『障害者がつくったもの=安い』といった、イメージを変えていくこと」と説明しました。また、「4人の広報チームで年間1000件以上のメディア露出を達成していますが、単なる露出数数ではなく、「どう報じられるか」という点に注力しています」とその取り組みの姿勢を語りました。

7割のお客様が「障害のイメージが変わった」

続いて小野さんは、今年前半に掲載された以下の三つの記事を紹介しました。これらの記事のタイトルには「障害者アート」という言葉が入っていません。

アートに満ちた空間で美しいクッキーを堪能。ヨックモックが期間限定のポップアップショップを開催(Vogue Japan、2024年5月17日)

「LVMHイノベーションアワード」受賞直後のヘラルボニー 絵画を纏うシャツ&バッグ始動(WWD Japan、2024年5月24日)

「HERALBONY Art Prize 2024」のグランプリを浅野春香が受賞。受賞作品展も開幕 (美術手帖、2024年8月10日)

例えば、美術手帖の記事では、グランプリを受賞した作家名がタイトルに記載されています。「展覧会の記事では、わかりやすさを優先され『障害者アートの展覧会』と題されるケースも多くありますが、やはり、契約作家さんは一人一人が名前もあり、個性も違うということを考えると、このように取り上げられたことが嬉しかったです」と小野さんは語りました。

さらに小野さんは、「ECの顧客アンケートの結果では、7割のお客様が『障害のイメージが変わった』と回答しており、少しずつパーセプションの変化が起こっています」とその結果を説明しました。

言葉を大事にして想いを共有

具体的なアクションとして「ヘラルボニーではこれまで、世の中に想いを伝えるためのソーシャルアクションとして、ヘラルボニーを通じて世の中が変化したファクトとストーリーを伝えるポスター掲示(参考:クリエイティブアワード受賞)を行っています」と小野さん。

他にも、広報チームではメディアとのコミュニケーションにおいて、打ち合わせでさっと披露できるような短い尺の動画を用意するなど、様々な工夫を行っているとのことです。その中でも、今回のマーケ広報meetupで特に参加者の注目を集めたのが、ヘラルボニーのワーディングスタンスを伝えるための2ページのドキュメントでした。

このドキュメントについて小野さんは、「取材の際には必ず記者にお渡ししていて、例えば、障害を『持つ』ではなく、障害が『ある』という表現にしてほしいということを、お願いしています」と説明。その理由として、「持つ」という言葉からは、「自分の意思で持つ」というニュアンスが感じられるため、「障害のある方は意思があって障害を持っているわけではないので『ある』にしてください」というように、説明しています、と語りました。小野さんによると、「当然、編集権があるため、あくまでお願いベースでの資料とはなっていますが、やはり記者も言葉を扱う立場から、『こういった背景がわかって勉強になった』、『一緒に考える機会になった』」とのことで、記者もポジティブに受け止めているようです。

現在、ヘラルボニーでは、同社が初めて設立した国際アートアワード「HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition」の展覧会(入場無料)を、9月22日まで丸の内で開催していますので、お近くにお立ち寄りの方は是非のぞいてみてはいかがでしょうか。

HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition

会期:2024年8月10日(土)〜 9月22日(日)

時間:10:00~18:00

料金:入場無料 

会場:三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン(東京都千代田区丸の内1-3-2)

公式ページ:https://hb.heralbony.jp/heralbonyartprize2024exhibition

(執筆:川原直子 構成:広報デリ編集部 写真:戸津弘貴)

登壇者略歴

小野 静香(おの しずか)

株式会社ヘラルボニー 広報室シニアマネージャー

株式会社ヘラルボニー 広報室シニアマネージャー。日本PR協会認定PRプランナー。仙台市ダイバーシティ推進委員。筑波大学社会学類を卒業後、2012年にサイバーエージェントへ入社。Webメディアのプロデューサーを経て、女性向けライフスタイルメディアの編集・マーケティングに従事。2017年に子会社の広報部門立ち上げへの参画を機に広報へ転身。

BtoB広報からWebサービス、化粧品などの広報PRに関わる。第一子の産休育休を経て、2022年よりヘラルボニーへ入社。広報室シニアマネージャーとして社内外のコミュニケーションを統括し、年間1,000件以上のメディア露出を実現。2023年のACCでは「PR部門」グランプリを受賞。1児の母。

イベントレポートカテゴリの最新記事